"勉強"を読み解く

皆さんは日本語は好きでしょうか?
ちなみに私は大好きです。好きなところをあげるときりがないのですが、その1つに漢字の面白さがあります。
英語はアルファベット26文字からいくつかを組み合わせて1つの単語をつくり意味を持たせますが、漢字はそれ一字で意味を持ちます。一字で意味を持つ漢字を複数使って成り立っている熟語は、それだけ情報を持つと言えます。そして時に漢字から単語の本質を読み取ることができます。

例えば、会話と通話は似た言葉ですが、どういう風に使い分けられているでしょう。
「会話」という言葉は「"会"って"話"す」ことですから、独り言ではなく、何人かが直接会って話すことを言いますね。
技術が発達して電話ができると、会って話すわけではないから新しい言葉が必要になりますね。電話は「"話"を"通"じさせる」道具ですから、"通話"という言葉をつくりましょう。
という流れがあったかは知りませんが、この2つは、会って話すか、電話で話すかの使い分けがされていることがわかります。

もう1つ例をあげてみましょう。
「葛藤」という言葉をご存じでしょうか?少し難しい単語かもしれませんが、辞書では以下のように載っています。

葛藤(かっとう)
1 人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと。「親子の―」
2 心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと。「義理と人情とのあいだで―する」
3 仏語。正道を妨げる煩悩のたとえ。禅宗では、文字言語にとらわれた説明、意味の解きがたい語句や公案、あるいは問答・工夫などの意にも用いる。
(goo辞典より)

日常では2番の意味で使われることが多いです。先日まで放送していた『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』では、妹を助けるか、里の人を助けるかで主人公炭治郎の葛藤が描かれていましたね。未読の方はぜひ。
話が逸れましたが、この葛藤という言葉を漢字から読み解いてみましょう。
実は"葛(かずら)"も"藤(ふじ)"もつる植物の一種です。葛藤という言葉は、葛と藤のつる同士が複雑に絡み合っているところから生まれた言葉です。つまり、いろんな要素が絡み合っていて、複雑な悩みの時にこそ使われる言葉であるということです。
私は葛藤という言葉を調べるまでは、何となく悩んでいるくらいのニュアンスで使っていたのですが、"苦悩"というべき悩みの時に使うのが本来的だと言えます。プリンを食べようか食べまいかくらいで使うには、ちょっと葛藤も気が重いといえるでしょう。

ここまで何が言いたかったかと言うと、言葉の漢字の意味を知ると、本質的な意味を見出すことができるということです。

では、本題のところの、"勉強"という言葉を読み解いてみましょう。
勉強は「"強"く"勉"める」と書きますから、学生の皆さんが使う意味で言うと、「一生懸命に学ぶこと」くらいのニュアンスになるでしょう。
…そりゃそうじゃない?と思われるかもしれませんが、本記事でお伝えしたいのは、この本質を見失っていませんかというところです。
少し見方を変えてみると、勉強は「"勉"めるを"強"いる」と書くこともできます。つまりは学ぶことを強制することです。
この意味で使う場合、主語は生徒ではなく、その周りになってしまいますね。「勉強しなさい」と無理に強制しても、勉強(勉めるを強いる)しているのは生徒本人ではないですから、これではどうしても学力は伸びにくいです。
だからこそ、まずは勉強の面白さを知ってもらって、自分から勉強(強く勉める)するようになることが重要であると考えています。
本校の方針の1番目が、興味を持ってもらうことであるのはそういった理由があります。

そもそも、教育は義務化されていますから、勉強はある種スタートが強制から始まります。
そういう意味で、スポーツやゲームなど自分から始めたものよりも面白くないですし、嫌いな学生が多いです。
しかし、嫌いなままで続けていくか、どこかで面白さを見出して勉強するかでは、将来的な学力には大きな差が生まれると思います。
本来的な意味での"勉強"をするために、勉強の面白さを発信できたらと思います。

2023/8/4